

書籍
安重根・「東洋平和論」研究
―21世紀の東アジアをひらく思想と行動
朝鮮植民地化を推進した伊藤博文を射殺した安重根は、「テロリスト」なのか、それとも「英雄」なのか。多文化の中で共に暮らし、永遠平和を目指し、EU(ヨーロッパ連合)構想に先駆けた安重根の思想と行動を理解することは日本にとってまた東アジア地域にとって重要な意味をもつ。
安重根はたった5ヶ月ほどの短い収監時に千葉十七を始め多くの日本人看守などと信頼関係を構築できた人物であった。安重根と日本人看守などは「異質」なものと対話する力と本質を見抜く力を持ち得たのである。本著は、日本ではこれまで狭く捉えられがちであった「安重根」という人物の思想と行動を探求することによって、東アジアの平和構想からアジア共同体構想、そして世界平和へという広がりを展望する試みである。この試みは、安重根の評価をめぐり日韓両政府が応酬する中、日韓関係史を新たな視点からの考察であり、東アジア地域の秩序が大きく変化する今日重要なテーマとなる。
◆目次
はじめに[平田厚志]
序――本書の主要論点とその全体構成[重本直利]
第I部 安重根・「東洋平和論」研究
第1章 安重根の「東洋平和論」――そのめざしたところと、形成された背景について[崔起榮]
第2章 安重根の東洋平和論成の背景[呉瑛燮]
第3章 安重根「安應七歴史」「東洋平和論」「聴取書」の「発見」と受容――1969年~2005年を中心に[勝村誠]
第II部 安重根の思想と行動
第4章 韓国の安重根と日本の知識人たちの平和論比較――千葉十七・幸徳秋水・徳冨蘆花・石川啄木・夏目漱石との関係を中心に[都珍淳]
第5章 「東洋平和論」で安重根が示そうとした根源的なテーマとは何か[重本直利]
第6章 日本の知識人の安重根像――都珍淳説に対する批判的応答[牧野英二]
第7章 旅順監獄における安重根と二人の日本人教誨師[平田厚志]
第III部 東洋平和に向けて
第8章 三・一運動100周年の歴史的意義[李俊植]
第9章 「東洋平和論」を念頭に、戦後の日本と朝鮮半島の関係を考える[田中宏]
第10章 安重根「東洋平和論」研究は日韓の「和解」への道を拓く――忘れてはいけない『菅首相談話』[戸塚悦朗]
〈コラム〉1905年11月17日付の「日韓協約」は存在しない[戸塚悦朗]
第11章 ユネスコ世界遺産のOUV(Outstanding Universal Value)「顕著な普遍的価値」とは何か――明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」をめぐって[中田光信]
結章 アジア隣国との共存・共生を目指して[李洙任]
おわりに 安重根の「東洋平和論」をめぐって[中村尚司]
共同研究 安重根と東洋平和
―東アジアの歴史をめぐる越境的対話
日本では伊藤博文の暗殺者、韓国では愛国殉国者とその歴史的評価が日韓で対立する安重根。彼の東洋平和論を掘り下げながら、東アジアで対立する歴史認識の根源を探り、歴史を克服した平和の構築を目指す日韓豪の研究者たちの白熱した討議記録。
◆目次
はじめに[李洙任]
序章 安重根の遺墨と和解に向けての越境的対話[李洙任]
第Ⅰ部 安重根像
第1章 歴史の沈黙と歴史の記憶――安重根の遺墨と「東洋平和論」の意義[牧野英二]
第2章 東アジア歴史認識問題の焦点としての安重根――東北アジア情勢と「東洋平和論」[柳永烈]
第3章 安重根と梁啓超――近代東アジアの二つのともしび[李泰鎭]
第4章 安重根遺骸発掘の現況と課題――日本に問う、遺骸はどこにあるのか[金月培]
第5章 東洋平和とは何か――安重根が拓いた新地平[中村尚司]
第Ⅱ部 歴史認識
第6章 越境する戦争の記憶――歴史認識、草の根の和解そして安重根の遺産[テッサ・モーリス=スズキ] 補論1 首相談話から見えて来る、この国の歴史認識[谷野隆]
第7章 安重根の汎アジア主義と日本の朝鮮学校のトランスナショナルな類似点について[スーザン・メナデュー・チョン]
補論2 高校無償化からの朝鮮高校除外の問題に関する意見書[田中宏]
第8章 福沢諭吉の朝鮮観――勝海舟と対比して[仲尾宏]
第9章 転向者・小林杜人における「弁証法」的真宗理解について[平田厚志]
第Ⅲ部 過去責任
第10章 こじれた日韓関係 和解への道を探る!――強制連行・『慰安婦』問題についての韓国の判決を手掛かりに[戸塚悦朗]
第11章 韓国大法院判決とダーバン宣言から見る朝鮮人強制連行・強制労働――日本製鐵(現・新日鐵住金)の事例から[中田光信]
第12章 強制連行企業の戦後補償責任――現代日本企業の過去責任と責任倫理[重本直利]
第13章 戦時期国策会社の鉱山開発――『帝国鉱業開発株式会社社史』から[細川孝]
補論3 鉱山労働者の苦難を学び、未来に活かす[李順連]
第14章 地域史料の掘りおこしと歴史教育[田中仁] 終章 「東洋平和論」の現代的探求――越境的連帯へ[重本直利]
おわりに[重本直利]